戻る index. Topページ

     判断と分別      


愛犬家が愛犬家たる理由に極めて高い知的能力が犬に備わっていると思っている。
 いわゆる犬は人同様に「お利口さん」なのだとの信念を持っている。なるほど犬は高い
  分別能力はある。しかし、それが判断を伴った知的レベルの能力だと云うわけではない。
何故ならば判断は,(広辞苑によると、)概念、推理と共に思考の根本形式なのです。

  判断は、幾つかの概念または表象の間の関係を肯定したり否定したりする作用です。 .
  判断は概念を前提するが、概念はまた、幾つかの判断の結果作られ、一つ以上の判断
                            によって結論を導き出す推理が成立する。
概念は、事物の本質をとらえる思考の形式です。事物の本質的な特徴とそれらの関連
が概念の内容(内包)。概念は同一本質をもつ一定範囲の事物(外延)に適用される
から、一般性をもつ。例えば、人という概念の内包は人の人としての特徴であり外延は
 あらゆる人々である。しかし、個体(例えば、ソクラテス)をとらえる概念(個体概念、単独
                概念)もある。概念は言葉に表現され、その意味として存在する。
概念の成立には哲学上いろいろの見解がある。                      .
        経験から多くの事物に共通の内容をとり出し(抽象)個々の事物のみに属する
偶然的な性質を捨てる(捨象)ということが通常の見解で、これに対立して       .
                        経験から独立した(先天的概念)を認める立場もある。

  こうしたゆえ残念ながら愛犬家の皆様、判断能力のある「お利口さん」の犬は存在
  しないのです。<判断は言葉を用います、犬は言葉は使えません。>しかし、判断を
  伴った知的レベルの能力が持ち合わせていなくとも、犬は、優れた*分別能力があり、
              その能力を発揮する「お利口さん」の犬は立派に存在しています。

* ここでいう分別<ブンベツ>は仏教用語の<ふんべつ>
                            高い認識のことではありません。


 分別は世界と関るに必要な情報の処理、すなわち順位と分類処理のことて゜
ソート(sort) 上下、大小の区別、セクト(sect) 分派、グループ、所属を区別
                                         することです。
世界と対応するに必要な情報は言葉を用いなくても、犬は分別をもって処理し
               経験・学習をもってあらゆる現実の事態に対応しています。

愛犬家が愚かな判断を停止して、犬を擬人化から解放して、新たに素晴らしい
犬の分別能力に気付いた時、本当の犬の「お利口さん」が見えて来ます。

愛犬家が、どの様に頑張らうとも犬は言葉が使えない。なのに対話が出来ると
思っている。対話は送り手と受け手とがあり、それが交互に入れ替わり言葉を
媒体として、意識(意図)が伝え、伝わつて成立するものですが,言葉が解らなく
とも話は出来ると愛犬家はその愛犬に話掛けています。そして犬にも*性格(パ
ーソナリティー)があり自己の意識の下に判断と分別をもって行動している。
           人と同様に犬にもそれぞれ個々に性格があると信じているのです。

 * パーソナリティーとは、社会生活における欲求満足及び不満処理を
   する仕方の個人的特徴を個人の性格と云うのですが、個人の性格は
 対人行動(パーソナリティーの心理的な交渉)により、家族,学校、
                        職場、等の環境の下に形成される。
@一体化(同一化)未分離 A役割学習 Bコミュニケーション
 C共感 D模倣 E暗示 ・・・・@においての投射(自分の一部
    パーソナリティーを他人に投げ入れる)は無意識の反感です。
     こうした経験を経て個人の性格(パーソナリティー)は形成されます。


愛犬家の「お利口な犬」との、お話は何故か幼児言葉です。それは対人行動
の形成における同一化の投射、役割学習のままごと遊びに見られる光景です。
 人と同様に大切に扱うことにより「お利口な犬」となるようにの試みなのでしょうか。
  こうした試みには健全な性格形成に必要な不満の処理の仕方が欠如しています。
 愛犬に不満を抱かせない快適な環境、欲求を満たしひたすら可愛がり、叱られた
  ことが無い、しつけ教育がされていない犬が、「お利口な犬」になれるでしょうか。

判断は思考の根本形式です。犬が判断出来るならば、その思考はどのような事
なのか、では人の思考法とはどのようなことか参考までに記します。


                

二つの思考法 

(一)、科学的思考法(科学的論理による計画及び、その実行。)

まず計画にあたり、科学は全体が偶然と必然との区別の上に成立すること、
                  その区別は「出来事」と「構造」の区別である。
計画は状態、状況から、かつ、その目的が発せられようとも立案者の概念の
                      全体から出発し完成されるものである。
計画は情報論理・・・・研究手続き、すなわち自然との対話に戻してみることが
どのように可能か?どのように有効か?理論的、実践的知識や技術的手段の
 全体を、この計画にあるべく一つ一つの素材要素、そうした資材集合を調べ上げ
ねばならない。かつ、可能なかぎりの制限を設けるものである。        .
                尚、「もう一つの情報を引き出そうとする、」姿勢である。

こうした資材集合への話しかけを経て、素材要素は集められる。よって、この
資材集合は計画の種類と同数の資材集合の存在であるべく前提のもので
                      なくてはならない、不足は許されないのである。
こうしたことから実行へと許されてゆくが科学論理によって計画されたものは
論理(法則)その証明(現実に立ち帰る、立ち向かう)することにより、その集団
         の計画実行下における運動及び形態は大いに更新するものである。


(二)、器用人的思考法(器用人仕事における計画および、その実行。)

あり合わせ(持ち合わせ)の道具及び材料を用いて、自らの手で作る、そして
多様な仕事をする。しかし、その仕事は、計画(単に略図であるがゆえ)に即して
考案された材料や道具が無ければ手が出せぬ(例えばエンジニア)ということは
ない、それは持ち合わせ(その時の限られた道具、材料)すなわち資材集合で
なんとかするという規則(ゲーム)であり、その持ち合わせの内容構成は    .

@目下の計画は、いかなる計画にも無関係。 A雑多でまとまりが無い。
B偶然の結果でしかない。 C残りもの。D単に資材性(潜在的有用性)
                                   によって定義される。


その要素は「まだ何かの?役に立つ」の原則により集められたもので明確な
一定用途に限定されるほどのものでない。そうした資材集合は操作媒体(オ
ペレーター)である。そして、その資材集合は器用人の「話相手」である。
 すなわち人間の製作品の残りもの、文化の部品集合に話し掛けるのである。
科学者と同様、理論的、実際的知識や技術的手段の全体を調べ可能な解決
で制限を設けるものである。だが、「前もって伝えられている」のであり科学者
のように「もう一つの情報を引き出そうとする」という姿勢とは異なる、これは
器用人は記号を用いての作業(記号作業)であり、科学者は概念を用いるの
  との異なりであり、よって記号全体と概念全体とのずれがある。そうしたことから
記号作業は(器用人仕事、その思考)は組みかえの操作媒体であって集合を
大きく更新もせず変換群を獲得するに止まる。それに対し概念(科学者は概念
を用いる)は仕事に使われる資材の集合を開く操作媒体となるのである。   .

 以上、二つの思考法は、このどちらかが計画にどのように使われるかは立案者
の置かれた環境(立場)状況(条件)時間(機会)により異なる。いずれにせよ
  可能な解決を設けることは変りはないが、通常その多くは立案者の性格、気質に
  より無意識的な作業開始となり、この二つの思考法の何れかが作用するのです。


犬は、人の思考法によらずとも世界からの情報に対応して生きています。その
優れた器官は分別能力により情報を収集し、かつ、世界と対応しているのです。
経験は行動(習慣)となり、その繰返しは行動傾向(習性)となり、即、世界との
対応となるのです。愛犬家の飼い犬のもっぱらの感心は、食欲と家族の中での
社会的順位です。その分別能力により我が立場を主張します。そして欲求相手
 を定めます。劣性は優性に席を譲るの原則を貫き、我がポジションを確保します。

愛犬家の犬は勝手に経験(学習)して、情報を収集(分別)して「お利口な犬」と
        なります。その利口さは、愛犬家の手に負えぬものとなるでしょう。
                                            以上。


 
馬鹿は遷る、その飼い主から。
「愚かな判断が、優れた分別を駄目にして、馬鹿な犬を作る」

  追記、映画「犬と私の10の約束。」の感動的なお話から、あなたも、愛犬に10の約束を誓う前に
 あなたの愛犬に3っつのお願いをしたら如何でしょうか。1、吠えるな 2、咬むな 3、暴れるな。
                     それを聞き届けてくれたなら、10の約束を守る愛犬家になlりましょう。





                     富士山
 59b


                         

NEXT 愛犬家へ                .


                                                (旅)